監修記事

生活費から内緒で貯めた「私のへそくり」が夫の財産!?夫婦間で贈与税が生じるケースについて

監修者

青山北町法律事務所

松本 理平

【夫婦間で贈与税】へそくりは夫の財産?専業主婦が生活費のやりくりで注意すること
  • 結婚や出産を機に専業主婦になり、夫の収入で生活をしている
  • 夫から渡された生活費をやりくりして「へそくり」を貯めている
  • 夫婦間贈与なんて今まで聞いたことも意識したこともない

このような主婦の方は、ぜひこの記事をお読みください。

相続の節税対策としてよく耳にする「贈与税」。

贈与税なんて私たち夫婦には関係のない話だわ

ちょっと待ってください。
夫婦の間でも贈与税が発生してしまうケースがあります。

たとえば、あなたが毎月の生活費をコツコツと貯めた「へそくり」も贈与税の対象になる可能性があります。

そこで本記事では、夫から渡されたお金で生活費をやりくりするときに注意することを主婦の視点で解説します。

【この記事を書いている人】

60代主婦。定年退職するまで30年以上フルタイム勤務。退職後は専業主婦になり夫の収入で生活。
毎月夫から自分の口座に振り込まれるお金で家計のやりくりをしている。

目次

生活費をやりくりして内緒で貯めた「へそくり」はだれのもの?

生活費をやりくりして内緒で貯めた「へそくり」はだれのもの?

結論からお伝えすると、夫から渡されたお金を秘密で貯めた「へそくり」は、夫の財産になります

「へそくり」の元手(原資)は、夫が稼いだお金だからです。

民法(768条)では『夫婦別財産』といって「夫が稼いだお金は夫の財産、妻が稼いだお金は妻の財産」としています。

  1. 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で、得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
  2. 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
民法第762条 – Wikibooks

生活費をやりくりして、友だちとランチをしたり洋服を買ったりしても(生活水準に見合った範囲なら)問題になることはありません。

頑張って貯めた「へそくり」について注意が必要な場合

夫から生活費として渡されたお金を「へそくり」にして自分の口座にがっちり貯め込んでいる場合は注意が必要です。

妻がやりくりして貯めたお金であっても夫の財産とみなされ、将来「相続税」の対象となる可能性があるからです。

「へそくり」のつもりがなくても、余った生活費が自分の口座に貯まっている場合も同様です。

名義上は妻の預金でも実質上は夫の財産と判断される預金は「名義預金」と呼ばれ、相続時に税務署が目を光らせています。

たとえ夫婦であっても、通常の日常生活費や教育費に必要なお金以外は 相続税の対象になる可能性がある財産という認識が大事です。

どうすれば「私のへそくり」を守ることができるの?

どうすれば「私のへそくり」を守ることができるの?

相続税など税金を引かれずに、自分のへそくりも守るための方法としては、お小遣いという名目で貰い、贈与にすることです。

夫に内緒で貯める「へそくり」では無くなってしまいますが、お小遣いという名目であれば、贈与税なしで夫からお金を受け取ることができます。

1年間に110万円以下であれば贈与税なしでお金を受けることができます。

贈与の事実を証明できるように、「贈与契約書」など書面を作成しておくことで安心です。

夫婦間でも贈与税が発生する場合について

贈与税とは『個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金』です。

たとえ夫婦間であっても課税の対象になります。

もし、税務調査でへそくりが見つかって相続税を課税された場合は、相続税のほか過少申告(無申告)加算税、延滞税が追加で課税されてしまうリスクがあります。

贈与税に関するよくある質問

夫から毎月受け取っている生活費は贈与税の対象になるの?

「生活費」「子供の教育費」としてもらっているお金は贈与になりません。したがって課税の対象になりません

結婚記念日に夫からのプレゼントは贈与税の対象になるの?

プレゼントが「年間110万円以下」であれば贈与税はかかりません

もしかして、自分の口座に入れている「へそくり」も贈与税がかかるの?

贈与税の対象になります。「へそくり」は生活費でないからです。

国税庁のタックスアンサー『No.4402 贈与税がかかる場合』
『No.4405贈与税がかからない場合』を参考にしています
No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁 (nta.go.jp)
No.4405 贈与税がかからない場合|国税庁 (nta.go.jp) 

原則「生活費」であれば贈与税はかからない

夫から渡されたお金を「生活費」や「教育費」として使う分には贈与税はかかりません

夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの(には贈与税がかかりません)ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、治療費、養育費その他子育てに関する費用などを含みます。

また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。

No.4405 贈与税がかからない場合|国税庁 (nta.go.jp)

夫からの高価なプレゼントは贈与税がかかる可能性がある

夫から110万円を越える高価なプレゼントをもらった場合、110万円を越えた分に関しては贈与税が発生するので注意が必要です

ただし、プレゼントが年間110万円以下であれば、暦年贈与となり贈与税の対象にはなりません。

暦年贈与について

1年間=暦年(毎年1月1日から12月31日まで)の贈与額(1人当たり)が110万円以下である場合に、贈与税がかからない制度です。

生活費をやりくりして貯めたお金は贈与税の対象になる?

夫から渡された生活費の余った分を貯めた金は贈与税の課税対象になる可能性があります

贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。

生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。

No.4405 贈与税がかからない場合|国税庁 (nta.go.jp)

専業主婦の私が生活費のやりくりで注意している5つのこと

ここからは、夫から渡されたお金で生活費をやりくりするときに私自身が注意していることを5つ紹介します。

  1. 「個人口座」と「生活費用口座」をきっちりと分ける
  2. 夫から預かったお金の使い道や流れを記録に残す
  3. 自分の身の丈にあった暮らしをする
  4. 仲良し夫婦でも「夫婦別財産」という意識をもつ
  5. お金に関する情報に関心をもつ

「個人口座」と「生活費用口座」をきっちり分ける

「夫から渡されたお金」と「自分自身が専業主婦になる前に稼いで得たお金」はしっかり分けて管理しましょう。

私は専業主婦になってから、「個人用口座」と「生活費用口座」をきっちり分けました。
夫から預かった生活費は全て「生活費用口座」で管理しています。

「生活費用口座」から「個人用口座」へお金の移動もしません。

日常の買い物はキャッシュレス決済にしているため、使用している電子マネーも「生活費用口座」に紐づけています。

生活費専用のクレジットカードもつくりました。
「楽天市場」でお米や生活必需品をまとめ買いするときは、生活費専用にしている楽天カードを使います。

楽天カードはひとりで2枚まで作ることができ、引き落とし口座も分けることができます。

また万が一、離婚になる場合も、個人口座と生活口座を混同していると、婚姻前の財産も、財産分与の対象とされるリスクがあります。

「生活費用」「個人用」に分けて2枚持ちすると便利ですよ。
混合しないようにするのがポイントです。

夫から預かったお金の使い道や流れを記録に残す

「夫から渡されたお金」は、使い道の流れがわかるよう記録に残しておきましょう。

私は、退職して専業主婦になってから家計簿をつけ始めました。

家計簿をつける一番の目的は、毎月夫から私の口座に振り込まれるお金の流れと残高を明確にしておくためです。

「夫から渡されたお金は生活費として適正に使っている」という証拠を残すためにも家計簿は重要です。

私は買いものをしたときにレシートを家計簿アプリに取り込んで、月に1回エクセルでつくった簡単な家計簿に入力しています。

(家計簿アプリの無料版は、データー保存の期限があるためご注意ください)

自分の身の丈にあった暮らしをする

夫から渡されたお金で生活費のやりくりをする場合、身の丈にあった暮らしをすることが重要です。

夫婦間贈与が発生しないとされる「生活費」とは、その人にとって通常の日常生活に必要な費用とされているからです。

私は退職して専業主婦になり、今まで以上に身の丈にあった暮らしを意識するようになりました。

生活に必要なお金は個人や家庭によって異なります。

仕事をバリバリしていた時の自分と退職した自分は、生活に必要なお金も変わります。

夫から渡された大切な生活費は、今の自分にあった使い方をするよう常々心がけています。

とはいえ、何でもかんでも我慢しているわけではありません。

やりくりした生活費で余裕が出た分は、夫婦共通の趣味である旅行代にあてて楽しんでいます。

仲良し夫婦でも「夫婦別財産」という意識をもつ

夫の財産や自分自身の財産を守るためにも「夫婦別財産」という意識を持っておきましょう。

 夫から渡された生活費は家族のためのお金ではありますが、夫の大切な財産でもあります。

決して自分が好き勝手に使っていいお金ではありません。

 「夫婦別財産」の意識が希薄だと、逆に専業主婦になる前に自分で稼いだお金も失うことになるかもしれません。

 私は専業主婦になった今も「自分のために使うお金は自分の力で稼ぎたい」という思いがあり、お小遣い稼ぎのアルバイトをしています。

 「家事の合間に自分のお小遣いを稼ぎたい」と考えている専業主婦の方におすすめなのが「WEBライター」のお仕事。

 特別な資格がなくてもパソコン一台あれば自宅で始めることができます。

興味がある方は、ぜひこちらの記事をごらんくださいね。

お金に関する情報に関心をもつ

夫の大切なお金を預かる以上、日頃からお金に関する情報に関心をもちましょう。

お金のことなんてよくわからないわ!」なんて無関心でいると、後々たいへんなことになってしまうからです。

たとえば、夫婦間贈与が問題となるのは、大金が動く以下のタイミングといわれています。

夫婦間贈与を注意すべきタイミング

  1. 相続が発生した時
  2. 不動産の購入時

相続が発生した時 
⇒ 過去に夫婦間贈与がないか税務署の調査が入ります

  • 無申告の贈与が見つかると「相続税」「無申告加算税」「延滞税」が課税されます
  • 贈与税の時効が過ぎても「相続税」の対象になります

不動産の購入時
 ⇒ 不動産登記をすると税務署に通知が入ります

どちらも「夫婦間で贈与税が発生することを知らなかった!」ではすまない問題ですよね。

正しい情報を入手するには?

国税庁が出しているタックスアンサーを確認することをお勧めします。

タックスアンサー(よくある税の質問)|国税庁 (nta.go.jp)

こちらには、よくある税の質問に対する一般的な回答をがわかりやすく掲載されています。チェックしてみてくださいね。

最後に

今回は、夫から渡されたお金で生活費のやりくりをするときの注意点を5つお伝えしました。

でも「夫が稼いだお金は夫のもの」「妻が稼いだお金は妻のもの」という法律上の考え方に、違和感がある方もいるのではないでしょうか。

 特に専業主婦の場合「夫を支えた内助の功は評価されないの?」と納得がいかない方がいるかもしれません。

 そのような場合は、きちんと専門家に相談した上で「夫婦間贈与」という形で夫からお小遣いをもらうようにしましょう

この記事が、家計管理を見直すきっかけになればうれしいです。

この記事の監修

弁護士(第一東京弁護士会所属)であり、芸能関係を中心とした企業法務・男女トラブル・不動産関係・投資トラブルを中心に取り扱っている。

弁護士(第一東京弁護士会所属)

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

PaMarryの編集部です。
編集部のメンバーは全員既婚者であり、かつ子供がいる家庭となります。
夫婦関係・育児・子育てにまつわる「あるある」「なるほど!」な記事を書いています。
ぜひ、夫婦問題の解決、子育て・育児のヒントにご活用ください。

『編集部管理者』
馬鳥 亮佑
ファザーリンクジャパン所属
https://fathering.jp/papafiles/common/20211206_batori.html
クーミル株式会社 代表取締役
https://coomil.co.jp/

目次