- 妻が交通事故でケガをして、しばらく家事ができない
- 専業主婦だから収入はないし、補償は治療費と慰謝料だけ?
- 保険会社から提示された金額が、妥当なのかわからない…
こんなふうに悩んでいませんか?
実は、専業主婦でも、交通事故で家事ができなくなった分は「休業損害」として請求できます。
ただし、保険会社から最初に提示される金額は、本来受け取れる金額より低いことが少なくありません。
知らないまま示談してしまうと、数十万円単位で損をしてしまうこともあります。
当記事では、主婦の休業損害の仕組みと金額の目安をわかりやすく解説します。
また、妻が事故にあったときに夫ができるサポートを5つご紹介します。
専業主婦でも交通事故の「休業損害」はもらえる
休業損害とは、事故のケガで働けなかった期間の「収入の減少分」を補償するお金です。
「収入がない主婦は対象外では?」と思われがちですが、そうではありません。
料理・洗濯・掃除・育児・介護などの家事は、家族のための立派な労働です。家事代行を頼めば、当然お金がかかりますよね。
そのため、家事労働にも経済的な価値があると考えられていて、裁判でも主婦の休業損害は認められています。
休業損害の対象になる人
- 専業主婦(家族のために家事をしている人)
- パートや仕事をしながら家事をしている兼業主婦
- 家事を担っている男性(いわゆる主夫)
一人暮らしで自分のためだけに家事をしている場合は、原則として対象になりません。「家族のために家事をしているか」がポイントです。
主婦の休業損害はいくら?3つの基準で金額が変わる
休業損害の金額は、どの「基準」で計算するかによって大きく変わります。
自賠責・任意保険・弁護士基準の違い
| 基準 | 1日あたりの金額の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自賠責保険の基準 | 6,100円 | 最低限の補償。2020年4月以降の事故に適用 |
| 任意保険会社の基準 | 自賠責と同じくらいのことが多い | 保険会社ごとの社内基準で、非公開 |
| 弁護士(裁判)基準 | 約11,491円 | 女性の平均賃金(賃金センサス)をもとに計算 |
弁護士基準は、国の統計「賃金センサス」の女性の平均年収をもとに計算します。
令和6年の統計では平均年収が約419万円で、365日で割ると1日あたり約11,491円です。
※統計は毎年更新されるため、金額は年によって変わります。
つまり、同じケガ・同じ期間でも、基準によって1日あたりの金額がおよそ2倍違うのです。
計算例:むちうちで3か月通院した場合
むちうちで3か月通院した専業主婦のケースで比べてみましょう。
あくまでイメージをつかむための一例です。
自賠責保険の基準の場合
実際に通院した日が40日だったとすると、
6,100円 × 40日 = 24万4,000円
弁護士基準の場合
弁護士基準では、ケガの回復にあわせて「家事ができなかった割合」を段階的に考えることが多くあります。
たとえば、1か月目は100%、2か月目は50%、3か月目は30%家事ができなかったとすると、
11,491円 ×(30日×100% + 30日×50% + 30日×30%)
= 11,491円 × 54日 = 約62万円
この例では、約38万円もの差が出ました。
実際の日数や割合はケガの内容や家事への影響によって変わりますが、基準によって受け取れる金額が大きく変わることは覚えておきましょう。
兼業主婦・共働き夫婦の休業損害はどうなる?
パートや仕事をしている兼業主婦の場合は、「実際の収入」と「女性の平均賃金(賃金センサス)」のうち、高いほうで計算するのが一般的です。
たとえばパート収入が年100万円なら、パート収入ではなく、平均賃金の約419万円を基準にできる可能性があります。
注意点
保険会社から、「パートを休んだ分」だけを休業損害として提示されるケースがあります。
その場合、本来の金額と数十万円の差がつくこともあるので、提示額の計算方法を必ず確認しましょう。
交通事故に強い弁護士が在籍するつくば第一法律事務所も、交通事故の休業損害を職業別に解説したページの中で、兼業主婦がパートの減収分だけで計算されると、適切な補償と数十万円の差が生じるおそれがあると注意を呼びかけています。
なお、フルタイムで働いていて平均賃金より収入が多い場合は、実際の収入をもとに計算します。
妻が交通事故にあったとき、夫ができるサポート5選
休業損害をきちんと受け取るには、「家事ができなかったこと」を示す材料が大切です。
ケガをした奥様は、治療で手一杯になりがちです。
旦那さんが一緒に動いてあげると、とても心強いですよ。
- 家事ができなかったことを記録しておく
- 家事代行やベビーシッターの領収書を残す
- 通院の日付と症状を夫婦で共有する
- 示談書にすぐサインしない
- 自動車保険の「弁護士費用特約」を確認する
サポート①:家事ができなかったことを記録しておく
「料理ができず夫が代わりに作った」「子どもの送り迎えを祖父母に頼んだ」など、家事ができなかった内容を日付と一緒にメモしておきましょう。
スマホのメモやカレンダーアプリで十分です。夫婦で共有できるアプリを使うと、つけ忘れも防げます。
サポート②:家事代行やベビーシッターの領収書を残す
家事代行サービス、ベビーシッター、食事の宅配サービスなどを使った場合は、領収書やレシートを保管しておきます。
家事ができなかったことを示す、わかりやすい証拠になります。
サポート③:通院の日付と症状を夫婦で共有する
休業損害の日数は、通院の記録が大きな根拠になります。
通院日やその日の症状、医師に伝えた内容を夫婦で共有しておくと、あとで保険会社に説明しやすくなります。
サポート④:示談書にすぐサインしない
保険会社から示談金の提示が来ても、あわてて署名・押印するのはやめましょう。
一度示談すると、あとから金額を変えることは原則できません。
「この金額が妥当なのか」を確認してからでも遅くありません。
サポート⑤:自動車保険の「弁護士費用特約」を確認する
意外と見落としがちなのが、旦那さん(または家族)の自動車保険についている「弁護士費用特約」です。
この特約は、契約者本人だけでなく、配偶者や同居の家族が事故にあったときにも使えることが多く、弁護士に相談・依頼する費用を保険でまかなえます。
- 弁護士費用の上限は300万円程度が一般的
- 特約を使っても、保険の等級は下がらない
- 自転車や歩行中の事故でも対象になる場合がある
補償の範囲は保険会社や契約内容によって違うので、夫婦で一度、保険証券を確認してみてください。
保険会社の提示額に納得できないときは、交通事故に強い弁護士に相談を
保険会社の担当者は、交通事故の交渉に慣れています。
知識のないまま被害者側が交渉するのは、簡単ではありません。
- 提示された休業損害が低い気がする
- 兼業主婦なのに、パート分しか出ていない
- 保険会社とのやり取りが精神的につらい
このように感じたら、交通事故に強い弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士が間に入ることで、弁護士基準での請求ができるようになります。
相談先を選ぶときは、交通事故の被害者側の相談を多く扱っているか、通いやすい場所にあるかを目安にすると安心です。無料相談を受け付けている法律事務所も少なくありません。
弁護士費用特約があれば費用の心配も少ないので、まずは気軽に相談してみてくださいね。
【まとめ】家事は立派な仕事。夫婦で正しい補償を受け取ろう
- 専業主婦・兼業主婦・主夫でも、交通事故で家事ができなければ休業損害を請求できる
- 1日あたりの金額は、自賠責基準で6,100円、弁護士基準で約11,491円と大きな差がある
- 兼業主婦は「実際の収入」と「女性の平均賃金」の高いほうで計算するのが一般的
- 家事ができなかった記録や領収書を残し、示談書にはすぐサインしない
- 夫や家族の自動車保険の「弁護士費用特約」が使えないか確認する
毎日の家事は、家族の暮らしを支える大切な仕事です。
事故でケガをしたときは奥様一人で抱え込まず、夫婦で協力して、本来受け取れる補償をきちんと受け取りましょう。

